「生産緑地の2022年問題」で不動産価値は暴落するのか?part1
生産緑地の2022年問題をご存知でしょうか。
この問題は、不動産業界では話題になることはありますが、一般の方には馴染みがないかもしれません。
そもそも生産緑地って何? という方もいるでしょう。
不動産価格に影響が出ると言われているため、知っておいて損はありません。
今回は、生産緑地の概要や生産緑地と関係が深い「2022年問題」について説明します。
生産緑地とは?
生産緑地の定義
生産緑地とは「生産緑地地区」区域内の土地や森林のことです。生産緑地地区は、生産緑地法で以下のように定められています。
- 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
- 五百平方メートル以上の規模の区域であること。
- 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
緑地環境を保全するのが第一の目的であるため、小規模な土地や荒野を生産緑地に指定しても意味がありません。
そのため、生産緑地は上記のような土地(一定の広さと条件を備えた土地)に限定されています。
生産緑地が誕生した背景
生産緑地が誕生した背景として、日本の人口増加があげられます。人口が増加した一部の地域で都市化が進み、次々と緑地が宅地へと変わっていきました。
緑地が急速に失われたことによって、住環境の悪化、土地の地盤保持・保水機能の劣化が起こり、緑地を守ろうという動きが広がったのです。そこで、1972年に緑地を守るために生産緑地法が制定されました。
ただ、当時の生産緑地法の規制は緩やかであったため、想定よりも緑地を守ることができませんでした。
そのため、1992年に法改正し「生産緑地」と「宅地化農地(都市計画において保全しない農地)」を定めました。
そこで生産緑地に指定されたエリアは、税制が優遇される代わりに建築行為や農地以外への転用などについて制限されることになったうえ、「営農義務」を課せられたのです。
生産緑地の税制優遇制度
生産緑地の税制優遇制度には、以下の三つがあります。
固定資産税の優遇
市街化区域にある農地については、市街化調整区域内の農地よりも固定資産税が高くなりますが、生産緑地に指定されることで、一般農地と同じ調整措置を受けることができ、市街化調整区域内の農地と同程度の課税となります。
相続税の納税猶予
農業を営んでいた被相続人から農地を相続した相続人は、相続税の納税を猶予され、さらに相続人が終身営農する場合には、納税猶予額は免除されます。
ただし途中で放棄した場合は、遡って利子税と合わせて相続税が課税されます。
贈与税の納税猶予
生前に後継者を定めて農地を一括贈与する場合に適用を受けられるもので、贈与者が亡くなるまで納税が全額猶予されます。
ただし、相続税と同様に、途中で営農を放棄すれば利子税と合わせて贈与税を納税する必要があります。
生産緑地は本当に30年間農地以外に使えないのか
たしかに生産緑地は、農地以外の目的で使用することを厳しく制限されています。しかしその一方で、身体的な理由で営農が続けられない場合は、市役所に買い取り申し出をすることができます。
買取申し出のあった農地は、市役所が関係公共機関に買取の意向を確認します。
買取希望がなかった場合は、その後農業委員会が農地として斡旋します。
そして売買が成立しなければ、3カ月後に生産緑地の行為制限が解除されるのです。
突然、公共機関に買取の意向を募っても、公共事業にうまく嵌る場所であることはまずありません。そもそも予算がついていないので購入できるはずがありません。
また農業委員会による農地の斡旋も、〇〇億円という法外な希望価格が付けられていることか多いので、農地として購入したいと手を挙げる人はまずいません。
こうして3カ月が経過すると、農地から宅地への転用が可能になり、自らがオーナーとなってマンション経営をしたり、民間の取引によって売却したりするという流れになります。
つまり農地を転用したいという思いのあった所有者は、既に行為制限解除への道を選択しているということです。