不動産相続登記が義務化①
不動産関係の話題で最近よくテレビでも取り上げられるのが「所有者不明土地」の問題です。
こちらのブログでも何度か取り上げていますが、2023年度に相続の際の登記が義務化される閣議決定がされたとのニュースが先日発表されました。
この問題は、有効な土地利用ができないということで国レベルで大きな課題となっているだけでなく、国民一人一人の権利にも大きく関わることです。
背景には相続登記の問題も絡んでおり、非常に根が深いものです。
今回は改めて「所有者不明土地」とはどういうものか、問題点やリスクなどについて解説したいと思います。
今回の記事のポイントは
①登記簿に正しい所有者が反映されていないと土地の利用・活用に支障が出る
②相続で不動産取得を知った日から3年以内に手続きを登記・名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となる
③住所変更した場合も不動産登記が義務化され、2年以内に手続きをしなければ5万円以下の過料の対象になる
④「所有者不明土地法」が整備され、手続きを取ることで所有者が分からない土地を自治体等が利用しやすくなった
所有者不明土地とは?
国土交通省によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」を所有者不明土地と定義しています。
通常、土地など不動産の所有者は「不動産登記簿」で確認することができますが、様々な理由で登記簿に正しい情報が反映されないケースが多くなっています。
これによって土地の所有者がだれであるのか分からない、名前が確認できたとしても居所がつかめないという事案が多発しています。
登記簿に正しい情報が反映されなくなる理由はいくつかありますが、一番の理由は相続登記がされないケースが多いためと考えられています。
現状では相続登記は義務ではないので、手間や登記費用の出費を嫌ったり、遺産分割協議が面倒、法定相続人間の話し合いがまとまらないなどの理由で登記されないまま放置されるケースが多くなっています。
その状態で所有者が死亡し、代替わりが続いていけば相続人は鼠算式に膨れ上がり、もはや誰に所有権があるのか分からないということになってしまうのです。
また、不動産の所有者の住所変更登記も義務化されないことから、住民票上の住所を変更しても不動産登記簿の住所が反映されておらず、所有者への連絡をとろうとしても所有者の居所がわからないという問題も発生しています。
このように相続や住所変更があっても登記が義務化されていないので所有者がどこにいるのか、現在生存しているのかわからないという不動産が多くは発生してしまっているのです。
この問題を国や自治体から見た場合、例えば公共用地として土地を取得したいのにその交渉相手が判明せず国土として利用できない、災害対策の工事が必要だが対象土地の権利者が不明で話を進められないということになり、実際に現実の問題として起きている状況です。
また、民間企業からみた場合、空き家となっている家を売却したい、街の賑わい創出のために土地を利用したいなど公共性のある事業の話が持ち上がっても、土地所有者が不明では話を進められません。
また、民間の取引でも、所有者のうち一人が行方不明、所在不明という状態が発生すると、その人の同意がえられないと空き家、空き地である不動産を売却したり、有効活用ができないという問題も発生します。
国土交通省の報告によれば、日本全体で所有者不明土地は約410万ヘクタールに相当するとされており、これは九州の土地面積を上回る数値です。
国や自治体のみならず民間にとっても、国土、不動産の有効利用を妨げられることになり経済や国力の維持など多方面への影響が危惧されているのです。
このように、不動産登記がきちんも為されないと様々な問題が生じてきます。
今回の相続登記義務化の動きもこのような問題を解決する為の一つとして始動していくのだと思います。
では相続登記義務化はどのような法律となるのでしょうか。
次回詳しく解説していきます!